作業のあれこれ其の十一
お預かりした自転車のとある作業。
左クランクの固定が非常に甘く危険だったので適正トルクで締めてみたらクランクが回らなくなりました。
クランクはFSAのゴッサマーなのですがBBはシマノのホローテックⅡが付いていてメーカーが認めていない組み合わせでした。
シマノクランク(下画像右)とFSAクランク(下画像左)の構造は同じでシャフト径も「ほぼ」同じ。※わずかにFSAの方が太いです
ただし付いていたクランクシャフトの長さは全く違います。
シマノは実測110mm
FSAは104.3mmでした。
基本的なお話になりますが
シャフト長=フレームシェル幅+BBベアリングカップ厚+左クランク厚
で各メーカーがクランクのシャフト長を設定しています。
FSAのBB(MEGA-EXO)は同社の各クランクモデルに合わせてベアリングカップの厚みが違くなっており当然シマノのBBとも厚みが違います。
当然そうなると前出のとおり必要なシャフトの長さに差異が生じてきます。
今回の場合は厚みの違うシマノBBに交換してしまったことで必要なシャフトの長さが足りなくなり、フィキシングボルトを締め込むとBBのベアリングが圧迫されて回転しなくなる状態でした。
そのため回転が渋くならない程度に左クランクを軽く締めたまま使用していたようです。
このまま使用すると最悪の場合走行中にクランクが外れてしまう可能性があり非常に危険な状態でした。
ネットでは今回の様なケースでも問題なく付けられるかのような誤解を招く情報が沢山あります。
こういった安全性が担保されていない「自己流」の記事を見て真似をしてしまう方も中にはいらっしゃるかと思います。
自己責任と言えばそれまでですが自転車は公道を走る乗り物です。
自分だけではなく周囲も巻き込む事故に繋がるケースもありますのでメーカーが推奨していない組み合わせはやめましょう。